インボイス制度実施後の労働保険の年度更新における消費税の取扱いについて確認

労働保険の年度更新

 労働保険(労災&雇用保険)の申告は、例年6月1日から7月10日まで間に行います。

 建設の事業などは、賃金総額を基にした申告に代えて、工事等の請負金額を基に申告することができます。この場合、一括有期事業報告書等に記入する請負金額からは、消費税等相当額を除くこととされています。

 インボイス制度が実施され、年度更新に及ぼす影響があるのか改めて確認します。

請負金額は税抜

 一括有期事業報告書等に記入する請負金額は、「労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則」第4条第1項第6号で「請負金額(消費税等相当額を除く)」と、条文中において「請負金額」を再定義しています。従って消費税等相当額を除いた金額を記入することになります。
 (平成27年3月31日以前に開始した工事に係る請負金額については消費税等を含めた金額を記入。)

インボイス

 令和5年10月1日からインボイス制度が実施され、適格請求書でないと仕入税額控除ができなくなり(一部例外と経過措置あり)、得意先との営業上の関係で、免税事業者であっても適格請求書発行事業者の登録を受けた事業者が結構いらっしゃると思います。

 インボイスの登録事業者は課税事業者となるため、年度更新における消費税の取扱いについては特に気にするところはありません。

 ここで問題、インボイスの登録をしていない免税事業者の請負金額には消費税が含まれるのでしょうか?

消費税が課せられる

 消費税は、「消費税法」第4条第1項において「国内において事業者が行なった資産の譲渡等には、消費税を課する。」としています。もちろん請負工事にも消費税が課せられます。
 この規定を根拠に、免税事業者であっても消費税を請求することができます。
 そして、免税事業者は消費税法上において「消費税を納める義務を免除する。」とされています。

 消費税法の規定に沿って考えると、消費税は当然に課せられているが、納税する義務は免除されている。ということになります。
 つまりは、免税事業者が「うちは消費税取ってないねん。」と言ったところで、そこには消費税が含まれる、いわゆる税込価額ということになります。

 ただし、消費税法基本通達1ー4ー5において「免税事業者が期間中に国内において行なった課税資産の譲渡等については消費税等が課せられていない。」としています。そうなると先にお伝えした内容から逆転し、消費税が含まれない金額となります。

 とはいえ、依然として得意先が支払う請負金額には課税仕入として消費税が課せられていますので、税込価額として取り扱って差し支えないものと思われます。

年度更新における一括有期事業の請負金額

 消費税の取扱いについては労働保険関係の法令上他に規定がなく、インボイスの登録状況、課税事業者か免税事業者のどちらに該当するかどうかを確認する要請も根拠もないため、一律的な対応をせざるを得ないと考えられます。

 以上のことを踏まえると、請負工事には消費税が課せられていますので、免税事業者の申告であっても消費税等相当額を除いた金額を記入することになります。

 結局のところ、インボイスも免税事業者も特に気にすることなく、消費税等相当額を除いてしまって問題ありません。

通勤手当

 ここで通常の賃金総額による申告の場合の話に変わります。

 年度更新の申告の際の賃金総額には通勤手当も含まれます。
 通勤手当には消費税が課せられていますが、税込価額のままで申告します。こちらは「労働保険の保険料の徴収等に関する法律」第2条第2項において「賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称のいかんを問わず、労働の対償として事業主が労働者に支払うものをいう。」とされているためです。

 税抜経理した帳簿を基に申告をすると、労働者に支払った消費税分が漏れることになりますので過小申告になります。

 突き詰めて正しく申告をしようとすると、システムによっては計算が煩雑になりそうです。
 まあ、このことを理解し、かつ、指摘をしてくるような人はいないでしょうけどね。

 通勤手当も、インボイスは何も気にするところはありません。