小売業の労災事故が建設業を超える

小売業で労災事故が増加

 小売業で労働災害の増加が深刻だ。年間の死傷事故件数は過去20年で4割増え、建設業を上回った。主な原因は従業員の高齢化と自動化の遅れだ。建設や製造と比べ死亡や重いケガが少なく、安全への意識が不十分なことも背景にある。

・・中略・・

 厚生労働省のデータを基にした日本経済新聞の推計では、21年に小売業で起きた死傷事故(休業4日以上、新型コロナ感染を除く)は1万7千人弱と過去20年で39%増えた。この間に小売業の就業者人口は7%減り、従業員1人当たりの事故件数も増えている。

出典:日本経済新聞 令和4年2月11日

小売業で労災事故が増加しているのには次の要因があります。

  1. 就業者の高齢化
     身体機能の低下による事故発生確率の拡大
  2. 省人化の遅れによる労働生産性の低さ
     労働集約型の働き方で事故を誘因している
  3. 経営者の安全意識の低さ
     軽微な事故が多く認識が甘くなりがち

 人材が不足しているところは多く、労災事故による従業員の休業は軽視できなくなってきています。休んだ従業員のシフトを他の人が穴埋めしなければならないため、事故を減らさなければ人手不足がさらに悪化することになります。

小売が建設を上回る

 これまで労災対策は製造業や建設業に重きが置かれていましたが、行政の対策、社会一般の認識、その他の要因により、ついには小売業が建設業の労災事故を上回ることとなりました。

社会福祉施設で労災事故が急増

 小売業以上に労災事故が急増しているのが介護を中心とする社会福祉施設だ。21年に発生した休業4日以上の死傷事故は新型コロナ罹患(りかん)を除いて1万3千件超と、過去20年で6倍を超えたもようだ。介護従事者は同じ20年で3倍以上に増えたが、事故の増加件数はそれを上回る。

出典:日本経済新聞

 社会福祉施設で最も目立つ労災は腰痛です。やはり入居者の移動や入浴を支援するのに腰を痛めてしまいます。腰痛は慢性化すれば職員の日常生活にも影響するので、何らかの対策を講じたいところです。

 小売りと介護はともに人間を相手にする仕事です。事故防止に特効薬はなく、地道な業務改善の積み重ねが欠かせません。