「心の資本」は十分ですか

幸福度の改善は業績の改善

 約15年間にわたって集めた延べ1千万日分の実証データを活用した実証実験では、人工知能(AI)が個人別にはじきだす幸福度に応じ、その改善に役立つメッセージを自動的に作成して送信するなどして、「心の資本」と呼ぶ指標が平均33%向上したそうです。指数の33%向上は営業利益の10%ほどの押し上げに相当するとのことなので、働く人の幸福度を高めることも事業の業績に影響を及ぼすこととして真面目に向き合うべきと考えます。

 熱意を持って仕事をする社員は5%。米ギャラップの調査で日本は世界の最低水準に沈む。30%を超える米国、20%前後の北欧諸国を大幅に下回る。「考える力」が問われる時代に社員が仕事に情熱を持てない状況では企業の成長は望めない。
 パーソル総合研究所と慶応大の前野隆司研究室の調査では幸せの実感が低い人が多い企業は減収が多かった。社内の幸福度の低さが企業の成長を阻み、それが社員の不満をさらに高めかねない。

出典:日本経済新聞

 米グーグルは一人ひとりの働く喜びを重視するよう唱えたアリストテレスにちなみ、「プロジェクト・アリストテレス」と呼ぶ社内調査を10年前から実施して企業風土改革を進めてきた。
 生産性が高くイノベーションを生む職場とそうでない職場との違いや要因を調べると「心理的安全性」が影響するとわかった。自由にものが言えたり組織に認められて安心感を覚えたりすることを指す。グーグルは社員のパフォーマンスに関係するこうした要素を重視する仕組みを磨いた。
 企業収益が低迷し社員の賃金も増えない。それが社員の仕事への意欲を萎えさせ生産性も上がらない――。そんな悪循環から抜け出す第一歩は挑戦が報われる仕組みを整え働き手のやる気を覚醒させることから始まる。

出典:日本経済新聞